Mi-24(ミル24;ロシア語:Ми-24ミー・ドヴァーッツァチ・チトゥィーリェ)は、ソ連のミル設計局で開発された戦闘ヘリコプターである。1978年以来、ソ連国内で約2000機が製造され、30ヶ国以上に約600機が輸出された。ソ連のパイロット達の愛称は「ワニ」(クロコジール;Крокодилクラカヂール)であった。また、北大西洋条約機構(NATO)はMi-24に対し「ハインド」(Hind)というNATOコードネームを割り当てた。Mi-25は輸出向けのMi-24Dダウングレード型であり、Mi-35は同様にMi-24Vをダウングレードした機体のほか、Mi-35P等ダウングレード型ではない発展型もある。
[編集] 概要
Mi-24は、汎用ヘリコプターであるMi-8から開発された。そのため、基本構造はMi-8やMi-17などと同じである。前頭部に搭載された2基のターボシャフトエンジンが、直径17.3 m、5枚羽のメインローターと3枚羽のテイルローターを駆動させる。Mi-24D以降の機体は、タンデム形 状のコクピットと、その上部にある横に2つ並んだ空気取り入れ口(エア・インテーク)が特徴的である。また中央部に兵員室があり、歩兵の輸送も可能である が、これにより大型化と重量に拍車がかかり、持久性と機動性を削いでいる。機体の中腹にある短翼には、兵器の搭載装置がそれぞれ3基ずつあり、物資を吊り 下げることもできる。着陸ギアは、引き込み可能な3輪である。任務としては、近接航空支援から対戦車戦、航空戦と幅広くこなすことができる。その重装甲とチタニウム製のローターは、12.7 mm弾の直撃にも耐えることができる。またNBC(核、生物、化学)戦に備えて、コクピットは加圧されている。
1969年のテストフライトで、機体を傾けた急な旋回中に揚力を 失って大きく横揺れすることが判明したが、完全には解決していない。また、敵陣営に近い低空を飛行することが多いことからの攻撃されやすさへの対策とし て、作戦時には2機1組もしくはグループで行動し、多方向から同時的に攻撃するという戦術が用いられるようになった。もう一つの欠点として、激しい機動を 行った際に、高荷重によりメインローターが機体の尾部を打つ可能性があった。また、最大限に積載した場合、垂直に上昇することができず、転移揚力を利用し た短距離の滑走をしながら離陸しなければならない。Mi-24は戦闘と輸送という二つの役割を負い、悪い折衷になってしまったことから、後継機であるMi-28やKa-50は、より対地攻撃に特化したものとなった。
ソ連のアフガニスタン侵攻では、空の主戦力として広範に使用されたが、アメリカがムジャヒディンに供給したスティンガーミサイルにより多数(一説によると300機以上)が撃墜された。
設計は、アメリカ軍のAH-1ヒューイコブラなどを比較対象としながら、1968年に始められた。最初の量産型であるMi-24Aは、1970年に 評価版として納入されたが、旋回が遅い、照準器のトラブル、並列座席により視界が悪いなど多くの問題を抱えていた。テイルローターは、Mi-24Aの後期 型からは取り付け向きがMi-17同様逆にされた。また、3人乗りのコクピットはガラス張り部分が大きかったため防御力に不安があった。機体前部の設計が 大幅に見直されてこれらの問題が解決されたのがMi-24D、エンジンの変更など決定版となったのがMi-24Vであった。Mi-24Pでは12.7 mm4銃身機銃の代わりに固定式の30 mm連装機関砲が取り付けられた。
1995年に導入された最新型のMi-24VMは、軽量のファイバー製メインローターとテイルローターにより、全体的なパフォーマンスが向上し、夜間作戦用などのアヴィオニクスも一新された。耐用年数やメンテナンス性も向上しており、2015年までの運用が予定されている。
[編集] 主な派生型
- Mi-24(Ми-24):初期型。12.7 mm機銃A-12.7を搭載している。
- Mi-24A(Ми-24А):初期改良型。1969年に初飛行。テイルローターの取り付け向きにより、前期型と後期型に分けられる。多くの機体がソ連空軍で運用されたが、のちにその一部はヴェトナム、エチオピア、リビア、アフガニスタン、アルジェリアなどに輸出に回された。ヴェトナムでは近年まで稼働中の写真が流布しており、恐らくは現在でも運用中であると見られている。
- Mi-24B(Ми-24Б):Mi-24Aの派生型。A-12.7機銃にかえ、3銃身のYaKB-12.7をUSPU-24ターレットに搭載。試験用に開発された。
- A-10(А-10):Mi-24Aの派生機で、記録飛行用に開発された。
- Mi-24U(Ми-24У):Mi-24Aの練習機型。前部座席にも操縦装置を追加している。A-12.7機銃は搭載しない。少数のみの生産であったが、ヴェトナムでは現在も運用中である。
- Mi-24D(Ми-24Д):中期改良型。1972年に 初飛行。タンデム式に変更された操縦席など、大規模な機体構造の変更がなされ、初期型の欠点を改善した。固定武装は、Mi-24Bに引き続きYaKB- 12.7がUSPU-24ターレットで搭載された。しかしながら、動力等は根本的に改善はされなかったため、より全面的な改修型であるMi-24Vまでの 繋ぎとして扱われた。生産数は多く、各国へ輸出もなされた。また、Mi-24Vの戦力化後は練習機としても使用され、Mi-24DUに改修されたものも あった。
- Mi-24DU(Ми-24ДУ):Mi-24Dの練習機型。前部後部座席ともに操縦機能を有している。
- Mi-24KhR(Ми-24ХР):Mi-24DおよびMi-24Vの機体から製作された化学・放射能偵察型(電波化学偵察型、Вертолет радиохимической разведки)。1978年に初飛行。ソ連軍のみで使用。現在は、ロシア、ウクライナなどで運用されている。Mi-24R(Ми-24Р)、Mi-24RKh(Ми-24РХ、ドイツ語方式ではMi-24RCh)、Mi-24RR(Ми-24РР)とも呼ばれる。
- Mi-24RKhR(Ми-24РХР):Mi-24DおよびMi-24Vの機体から製作された化学・放射能偵察型(電波化学偵察型)。ソ連空軍のみで運用。チェルノブイリ原発事故でも現場へ投入された。冷戦後は、機体を継承したロシアやウクライナによって国連平和維持活動などにも提供されている。Mi-24R(Ми-24Р)とも呼ばれる。
- Mi-25(Ми-25):Mi-24Dの輸出型。1972年に初飛行。新しいMi-24Vが開発されたことから相対的に旧型となったMi-24Dが輸出可能となったため、輸出専用機として開発された。
- Mi-24V(Ми-24В):エンジンを換装しシステムも更新した量産型。但し、初期型はMi-24Dとほぼ同等の機体である。1972年に初飛行。新型の対戦車ミサイル9M114シュトゥールム-Vを運用する。なお、ポーランドではポーランド語の言語上の理由からMi-24Wと表記される。
- Mi-35(Ми-35):Mi-24Vの輸出型。1976年に初飛行。
- Mi-35U:Mi-35を複操縦化した機体でインド等で運用されているが、Mi-35Uという名称は正式なものではないと見られている。
- Mi-24P(Ми-24П):30 mm連装機関砲GSh-30K搭載型。従来の12.7 mm機銃では打撃力に不安があったため開発された。1974年に初飛行。
- Mi-24VP(Ми-24ВП):YaKB-12.7かえ、新型のNPPU-23ターレットに23 mm連装機関砲GSh-23-2を搭載した。Mi-24Vの12.7 mm機銃では攻撃力が不足、Mi-24Pの30 mm機関砲では弾数が不足かつ重量過多であったため、そうした問題を解決するため従来戦闘機用の航空機関砲や地上軍の高射機関砲として広く使用されてきたGSh-23-2を搭載する派生型が開発された。1986年に初飛行、1989年より量産に入ったが、新型機銃の不良と冷戦の終結もあり少数生産に終わった。ロシア空軍とウクライナ陸軍航空隊で運用されている。
- Mi-24VMT(Ми-24БМТ):Mi-24Aから改修した機雷掃海型。
- Mi-24K(Ми-24К):Mi-24Vの陸軍直協観測機。ソ連軍のみで使用。現在は、ロシア、ウクライナ、ベラルーシで運用されている。
- Mi-24PN(Ми-24ПН):Mi-24Pの夜間攻撃能力等改良型。1999年に初飛行。
- Mi-24PS(Ми-24ПС):警察向けに開発された機体。機関砲のかわりに大型の投光器を搭載するなどしている。1997年に初飛行。
- Mi-24VM(Ми-24ВМ):23 mm連装機関砲GSh-23Lを搭載したMi-24VPの改良型。新型の対戦車ミサイル9M120アターカ-Vを運用する。1999年に初飛行。
- Mi-24L(Ми-24Л):
- Mi-24VK-2(Ми-24ВК-2):Mi-24Vの発展型。輸出名称Mi-35VN(Ми-35ВН)。
- Mi-24PK-2(Ми-24ПК-2):Mi-24Pの発展型。輸出名称Mi-35PN(Ми-35ПН)。
- Mi-35M(Ми-35М):固定脚にして軽量化を図った機体で、夜間攻撃能力等を改良されている。1998年に初飛行。機関砲は、NPPU-24ターレットに23 mmのGSh-23L連装機%
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