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潜水艦 USS Grayling(1909年進水)

潜水艦 USS Grayling(1909年進水)

潜水艦(せんすいかん、Submarine)とは、水上のみならず、水中も航行することのできる軍事作戦用の船舶を指す。第二次世界大戦においてはサイズに応じて潜水艦、潜水艇特殊潜航艇と様々に呼ばれた。民間で使用される海底探査や水中遊覧用の船舶は「潜水艇」や「潜水船」と呼ばれる。

軍備は、その大小を問わず安全保障上の問題から性能や仕様などには不明な点が多いが、その中でも隠密行動を身上とする潜水艦は機密事項が多い。最大潜航深度は最たる軍事機密事項である。

[編集] 機能と任務

巡航ミサイルを発射する改オハイオ級巡航ミサイル原子力潜水艦

巡航ミサイルを発射する改オハイオ級巡航ミサイル原子力潜水艦

潜水艦は最大で水深300~800m程度に潜航し、好きな時に好きなところから攻撃できる隠密兵器である。潜航した状態で巡航する場合は、水上船舶との衝突を防ぐため水深約100m付近を航行している。この隠密性を利用して下記内容の任務が与えられる。

  • 敵に気付かれずに監視網を突破できる。 第一次第二次世界大戦ではドイツの潜水艦が、水上兵力では圧倒的に優勢であったイギリス海軍の警戒線を突破して大西洋地中海へ進出した。第二次大戦中にドイツへ往復した日本潜水艦もある。
  • 敵対国の港湾に接近・侵入し、偵察・情報収集を行う。
  • 敵の予想進路上に潜み、待ち伏せ攻撃を行う。
  • 戦略ミサイル搭載原子力潜水艦による核抑止力。原子力潜水艦は浮上することなく行動しつづけることができ、その行動の隠密性は非常に高い。この原子力潜水艦に長距離核ミサイル (SLBM) を搭載すれば、万一核戦争が勃発し地上基地が敵の先制攻撃で壊滅した場合でも、無傷で強力な反撃力を温存できる。自国がこのような反撃力を保有すれば敵は先制攻撃を決断できず、核戦争は起こらないというのが核抑止力の理論。
  • 隠密性の高い潜水艦を探知し攻撃するのは、やはり潜水艦が有利であると言われている。そこで敵の戦略ミサイル潜水艦を攻撃する任務や、自国の艦隊を敵の攻撃型潜水艦から護衛する任務を与えられている。アメリカ合衆国機動部隊には必ず攻撃型原子力潜水艦が1隻ないし2隻随伴していると言われている。
  • 特に小型の潜水艇は、外洋航行力には欠けるものの、沿岸など地形の複雑な場所に隠れると極めて探知されにくい。このため、敵の支配水域に侵入して情報収集に当ったり、スパイを送り込んだり、捕えた敵を海岸付近で収容して誘拐したりすることに用いられる場合もある。

[編集] 種類

[編集] 攻撃潜水艦

おやしお型攻撃潜水艦

おやしお型攻撃潜水艦
アクラ級攻撃原潜

アクラ級攻撃原潜

厳密には、任務や大きさ等に応じ、艦隊型潜水艦、航洋潜水艦、沿岸哨戒潜水艦、対潜潜水艦(SSK)などに分けられるが、全て敵の水上艦艇や潜水艦などを探知し撃沈する事を任務とする潜水艦であるので、本項では一括して扱う。

攻撃潜水艦は米海軍式にSSと略される事が多い。原子力機関を搭載した物は、この後ろに原子力(Nuclear)を表すNを付けてSSN(攻撃型原子力潜水艦/攻撃原潜)と呼ばれる(ロシア海軍式に略すとそれぞれPL、PLAになる)。

かつては敵水上艦に速力・防御力・探知能力などで劣ったため、敵の巡洋艦駆逐艦とまともに戦うには分が悪く、主に待ち伏せ攻撃や港湾での情報収集、特殊部隊投入、物資輸送、商船を相手とする通商破壊などに投入された。

隠密性に優れる潜水艦は敵に気付かれずに監視網を突破できる。その利点を生かし、第一次・第二次大戦ではドイツの潜水艦が、水上兵力では圧倒的に優勢であったイギリス海軍の警戒線を突破して大西洋や地中海へ進出した。第二次大戦中にドイツへ往復した日本潜水艦もある(遣独潜水艦作戦)。

大日本帝国海軍は艦隊決戦用に潜水艦を建造・整備し、太平洋戦争中は敵主力艦攻撃へ重点的に投入したが、やはり目だった戦果が上げられないまま多くが撃沈されていった。

しかし第二次大戦以降、ソナーや各種電子機器、通信装置の性能向上、さらに原子力機関の登場により画期的に性能が向上し、現在では強力な戦闘力を持つ最強の軍艦として、かつての戦艦に匹敵する地位を獲得した。

ま た、攻撃目標は水上艦船から主に敵潜水艦を攻撃目標とするようになった。隠密性の高い潜水艦を探知し攻撃するのは、やはり潜水艦が有利だからであ る。そこで敵の戦略ミサイル潜水艦を攻撃する任務や、自国の艦隊を敵の攻撃型潜水艦から護衛する任務を与えられている。米海軍の空母機動部隊には必ず攻撃 型原子力潜水艦が1隻ないし2隻随伴していると言われている。

また、冷戦終結後はソ連海軍の脅威が無くなったため、米海軍の潜水艦は主任務を潜水艦の攻撃及び護衛から、巡航ミサイルを用いての対地攻撃や、敵対国の港湾に侵入しての偵察・情報収集、特殊部隊の投入・回収などに主眼を移すようになった。

映画では潜水艦同士の戦いがよく描かれるが、今のところ現実には潜水艦同士が水中で戦闘を行ったケースは記録されていない。厳密には第二次大戦時、浅深度を航行中のUボートの、水上に突き出したシュノーケル潜望鏡で目視して雷撃したケースがあるが、実質水上艦艇に対する雷撃と変らないため、潜行中の艦同士の戦闘とは言いがたい。ホーミング魚雷実用以前の潜水艦は、水中を三次元に移動する目標を攻撃することが困難であり、また現代でも潜水艦を保有する国同士の本格的な戦闘例が少ないためといえる。

[編集] 弾道ミサイル潜水艦

オハイオ級SSBNのアラバマ(SSN-731)

オハイオ級SSBNのアラバマ(SSN-731)

潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)を搭載し、敵国への核攻撃を目的とする。略称はSSBであるが、その性質上、原子力推進が取られるので、SSBNの略称しか見られない。米俗語で「ブーマー」と呼ばれる。通常動力型の弾道ミサイル潜水艦(SSB)は一時期は存在したが(ソ連海軍ゴルフ級)、原子力推進が普及した現代では見られない。

弾道ミサイルの射程が短かった冷戦初期はともかく、現代でもわざわざ潜水艦にSLBMを搭載する目的は、

  • 原子力潜水艦は浮上することなく行動しつづけることができ、その行動の隠密性は非常に高い。この原子力潜水艦にSLBMを搭載すれば、万一核戦争が勃発し地上基地が敵の先制攻撃で壊滅した場合でも、無傷で強力な反撃力を温存できる。

と言う理由から。自国がこのような反撃力を保有すれば敵は先制攻撃を決断できず、核戦争は起こらないとされる(相互確証破壊戦略)。このための核抑止力を保持する目的がある。

任 務上、核戦争が始まると真っ先に敵が攻撃して来るので、極めて生存性・静粛性が重視される。このため、定期的な浮上を必要とする通常動力推進は使 えず、原子力推進が取られる。従来はSLBMの発射時に浮上する必要があったが、最近のものは潜航したまま発射できるものが増えている。

[編集] 誘導ミサイル潜水艦

誘導ミサイル潜水艦(SSG)は、巡航ミサイルを搭載しての対地攻撃を目的としたもの。冷戦終結による核抑止力の重要性が低下したため、米海軍では一部のSSBNを対地攻撃用に改造した改オハイオ級などが現れた。 ソ連海軍も冷戦期にSSGを保有していたが、こちらは米空母機動部隊攻撃用に対艦ミサイルを搭載していた。

[編集] 特殊潜航艇

ドイツ海軍の特殊潜航艇ゼーフント

ドイツ海軍の特殊潜航艇ゼーフント

排水量数十トン、乗員数名程度の超小型潜水艦。

兵装搭載力や航続力が小さく外洋航行力には欠けるものの、小型のため探知され難く、特に水深が浅く障害物の多い海域では探知・攻撃される可能性が低い。そのため、沿岸警備や待ち伏せ攻撃に使用される。第二次大戦時には真珠湾攻撃に使用された日本海軍の甲標的や、戦艦ティルピッツ攻撃に使用された英海軍のX型潜航艇などを始めとして各国で特殊潜航艇が製造され、それなりに活躍した。

現 代でもその利点を生かして、敵の支配水域に侵入して情報収集に当ったり、スパイを送り込んだり、捕えた敵を海岸付近で収容して誘拐したりすること に用いられる場合もある。平時にも特殊潜航艇は領海に不法侵入して活動を行うので、冷戦期のソ連特殊潜航艇は西側諸国にとって厄介な敵であった。特に旧ソ連、旧ユーゴスラビアでの開発が著しく、北朝鮮は旧ユーゴスラビアから技術を移入して潜航艇建造に努めてきた経緯がある。一方で、イタリアにおいても一部企業が特殊作戦用の潜航艇を建造しており、同海軍は採用していないものの、旧ユーゴスラビアや中近東諸国、コロンビアなどに輸出された実績がある。

1996年韓国江陵浸透事件では、北朝鮮工作員がサンオ級潜航艇による韓国国内侵入に成功しており、侵入作戦用器材としての潜航艇の有用性を証明している。

[編集] 構造

[編集] 船体形状

ドイツ海軍のU-VIIC型。水上航行に適した船型。船体中央部の張り出しは非耐圧構造の海水・燃料槽

ドイツ海軍U-VIIC型。水上航行に適した船型。船体中央部の張り出しは非耐圧構造の海水・燃料槽
海上自衛隊のゆうしお型。水中での航行に適した涙滴型。

海上自衛隊ゆうしお型。水中での航行に適した涙滴型。
アメリカ海軍のシーウルフ級。葉巻型の船体で、涙滴型よりも船体中央が膨らんでいる。

アメリカ海軍シーウルフ級。葉巻型の船体で、涙滴型よりも船体中央が膨らんでいる。

潜水艦の船体は、水上航行に適した船型のものと、水中航行に適した涙滴型・葉巻型・鯨型の外形をしたものに分けられる。第二次大戦頃までの潜水艦は水中行動力が低く、水上航行をしている事が多かったので水上で航海しやすい船型の船体をしていた。

しかし第二次大戦以降は、電動機蓄電池な ど推進装置の大幅な性能向上や、原子力機関の登場により潜水艦の水中行動力が画期的に上昇したために、水中航行に適した円筒型の形状となった。 世界で初めて円筒型船体になったものは、1953年にアメリカが建造した水中高速試作実験艦アルバコアで、その効果が確認されて以後、バーベル級から涙滴 型船体が採用されていった。

円筒型の船体は水中での抵抗が少なく、また強度も高いので、船体に高い圧力がかかる深海での潜航には不可欠な 形状である。円筒型の中でも、最も抵抗 が少ないのは涙滴型であるが、艦内空間の大きさや建造のし易さでは葉巻型に分がある。また、水上航海し易いように浮上時の乾舷確保を狙った形状が鯨型であ る。

[編集] 船体構造

潜 水艦の船体構造は、大きく単殻式と複殻式に分けられる。単殻式は、船体そのものを耐圧構造としたもの。複殻式は、乗員が乗り込み、兵装や機関など の主要部品を搭載する部分(内殻)の外部を外殻で覆って、魔法瓶のように二重構造としたもの。内殻と外殻の間を海水や燃料などの液体で満たしておけば、水 圧は内殻にそのまま伝わり、外殻には伝わらない。したがって、内殻のみを耐圧構造とすればよい。単殻式船体と比べ、複殻式の特徴は、

  • 外殻と内殻の間を燃料や海水を入れるスペースにできるので、航続力や予備浮力を大きくすることができる。
  • 外殻と内殻が離れているため、外部に漏れる騒音を減らす事ができる。また、被弾時に外殻や間の海水・燃料が爆圧を吸収するので、内殻へのダメージが少なくなり、艦の耐久力を上げる事ができる。
  • 単殻式より船体が大型化し、複雑な構造になりやすい。
  • 船体側面部のソナー(コンフォーマル・ソナーフランク・アレイ・ソナー)を取り付けるのが難しくなる。

な どである。他に、単殻式船体の側面に非耐圧構造の張り出しを設けて、そこを海水や燃料を入れるタンクとした半殻式(サドル・タンク式及び部分複殻 式)と呼ばれる、両者の中間を取ったものも造られ、第二次大戦時の潜水艦に多く見られる。 他に特殊な船体形状として、外殻の内部に2つの内殻を連結したような形状の、伊四〇〇型潜水艦タイフーン級SSBNなどがある。

[編集] 材料

艦体構造材(船殻材)には深深度への潜航を可能とするため主に高張力鋼が用いられ、材質自体も絶えず改良が加えられている。一方ロシア(旧ソ連)で1970年代から1980年代にかけて建造されたアルファ級をはじめとするいくつかの艦級で、潜航深度の一層の増大と磁性を持たないという特徴を生かしてチタニウム合金が使用された。しかし加工が困難であることや音波の反射性が高いこと、そして高張力鋼を使用した場合に比べて格段にコストが高いことなどから一般化していない。

[編集] 潜水・浮上機構

潜水艦は、浮上している時は浮力が船体重量(重力)を上回っている状態で、潜航したい時は船体のタンクに海水を注入することで船体重量を増加させ、浮力と船体重量を等しくさせることで沈降する。

海水を入れるタンクにはメイン・バラスト・タンク(メイン・タンク、バラスト・タンクなどと略される)、ネガティブ・タンクトリム・タンクが ある。メイン・タンクは、海水や空気を注排出することで艦の浮力を調整するタンクで、ネガティブ・タンクは潜行時の補助に使う耐圧構造のタンクである。ト リム・タンクは前後に二箇所あって、前部タンクと後部タンクの水量を変えることで艦前後の重量バランスを変化させ、艦の前後の傾き(トリム)を調整する。

潜航時はまず、メイン・タンクの上部にあるベント弁(タンク内の空気を排出する弁)を開く。すると、メイン・タンク下部にあるフラッドホールと呼ばれる穴から海水がタンク内へ流入し、メイン・タンク内が海水で満たされ、潜水艦は浮力重力が釣り合った状態になり海面下に沈下する。その後、トリム・タンクや舵を操作して艦首を下げ、目標深度まで前進する。

目 標深度到達後は、水中で艦を水平状態に保つ(トリムをとる)必要がある。つまり、潜舵・横舵を水平に保った状態で、艦体の水平がとれるようにす る。具体的には、トリム・タンク内の海水の注出入して艦のトリムをとることになる。同じ潜水艦でも、個々の場合で積載状態が異なり重量バランスが変わるた め、こうした操作が必要になる。

なお、潜水艦の潜航深度能力は最重要機密であり、一般に公開するときは深度計が見えないように目張りをし てしまうほどである。一般に発表される潜航 深度は参考程度の価値しかないが、それらのデータによれば、攻撃型潜水艦の潜航深度は300~600m程度、戦略ミサイル原潜が100~500m程度であ る。武装した潜水艦の潜航深度記録は、1985年にチタン合金船殻の旧ソ連原潜K-278が記録した1027mで、K-278はこの深度で魚雷発射が可能であったと言われている。当時このような深度に潜む潜水艦を探知し攻撃する能力はアメリカも有していなかった。

軍事以外の潜水艇の深度世界記録は、1960年にアメリカのトリエステ2号が出した深度10,916mである。トリエステは深海での調査研究を目的としており、防御面やソナー対策など様々な性能が外殻に求められる軍事用の潜水艦に、当然ながらこれほどの潜航深度能力をもつものはない。

[編集] 舵・スクリュー

潜水艦は海中で三次元の運動を行う必要があるため、水上艦と違って縦舵の他に横舵潜舵を付けている。第二次大戦時頃までの潜水艦は、水上航行している時間が長かったことから水上航行に適した配置であった。また、水中での最高速度が低かったため、大型の舵を付けていた。

その後、潜水艦は殆ど水中航行するようになり、水中での最高速度も大幅に向上したため、縦舵や横舵は水中航行に適した十字型やX字型の配置になった。また、潜舵は従来艦首部に配置されていたが、艦首部はソナーをはじめ音響装置のスペースになったために、騒音を減らすため艦橋側面に付けられるようになった(セイル・プレーン式)。ただし、ロシアは北極海などでの作戦を考慮して、艦首部に取り付けていた(バウ・プレーン式)。

潜水艦のスクリュープロペラは、 水上航行を中心とした時代は小口径のプロペラを複数付ける形式がとられていた。効率を考えると、小口径プロペラを高速回転させるより大口径プロペラを低速 回転させる方が、同じエネルギーでも推進効率が高い。しかし、大口径プロペラでは水上航行時に空回りしてしまうので、小口径プロペラを使わざるを得なかっ た。後、潜水艦が水中航行を中心とするようになってからは涙滴型船体を採用したため、大口径プロペラを装備するようになった。

潜水艦の推進器に関する問題で最も厄介なものが、キャビテーションと呼ばれる現象(プロペラ、特に周速が速い先端部付近の海水の圧力が低下することで海水が気化し、水蒸気の気泡が発生する現象)である。キャビテーションが起こると、プロペラ付近で水蒸気の気泡が破裂し、その音を敵に探知されてしまうからである。この現象を抑えるために、ハイスキュー・プロペラと呼ばれる特殊なプロペラや、ポンプジェット式推進装置を採用している。

プロペラの加工には高度な工作機械が必要とされるが、冷戦時代、東芝グループ企業である東芝機械ソ連に輸出した工作機械が、ソ連原潜用プロペラの加工に使われ、それによってソ連原潜の静粛性が向上したのではないか、との疑惑が持ち上がった(東芝機械ココム違反事件)。このため東芝がアメリカで糾弾の対象となり、東芝製ラジカセをハンマーで叩き壊すデモが行なわれたり、同社製品の不買運動が行われた。

だが、1990年代初 めのソ連崩壊以降の情報公開により、これは「濡れ衣」であったことが明らかにされた。旧ソ連の潜水艦のプロペラ音の静穏化は、アメリカの潜水艦探知能力を ソ連海軍が過小評価していたことを、ソ連の情報機関が確認したので改善された、という実に単純な理由からであった。工作機械の納入先も明らかになってお り、プロペラとは無関係な部署であることもはっきりしている(にも関わらず、未だに、この「静粛化神話」を信じている者は多い)。軍事オタクの間では、これは当時日本が開発中であったFSXの設計に横槍を入れるためにアメリカが仕組んだ陰謀であると囁かれている。

[編集] 機関

潜水艦は、登場以来長らくディーゼル機関電動機を併用していた。この方式には直結式ディーゼル・エレクトリック方式がある。直結式はディーゼル機関、電動機(発電機兼用)、スクリューを直結したもので、水上航行時にはディーゼル機関を、水中航行時は電動機で航行する。ディーゼル・エレクトリック方式は、水上航行時はディーゼル機関で発電機を回してその電力で電動機を動かし、水中航行時は蓄電池の電力で電動機を動かす。前者は水上航行時に高速が出せるが充電効率が低かった。そのため、潜水艦の水中航行が主流となった第二次大戦後には、充電効率に優れる後者が主流となった。

世界で初めて原子力機関を搭載した、米海軍原潜ノーチラス(SSN-571)

世界で初めて原子力機関を搭載した、米海軍原潜ノーチラス(SSN-571)

第二次大戦後は、原子力機関の 登場により潜水艦の水中速力は大きく上昇、航続力は無限大にまで拡大した。原子力機関は有り余る出力を生かして海水を電気分解し、艦内へ常時新鮮な酸素を 提供する。このため、燃料と排気の匂い(ディーゼル・スメル)で充満した通常動力潜水艦の艦内に比べ、原子力潜水艦は「世界一空気がきれい」と言われるほ ど艦内は快適である。

常に蓄電池の残量を気にしながら、定期的な浮上を必要とする通常動力潜水艦と、無限の航続力を持ち氷の下の北極海すら航行可能な原子力潜水艦との間には、可潜艦(submersible)と潜水艦(submarine)ほどの差がある。こうして見ると、原子力潜水艦は圧倒的に優位と思われるが、欠点も幾つかある。原子力推進は、減速ギアの擦れる音や原子炉冷却水循環ポンプの騒音が発生するので、ディーゼル・エレクトリック式よりも静粛性に劣る。また、技術的水準や建造費、維持費が高く、保有できる国は限られる。日本等は技術上の問題の他、政治上の都合により保有していない。

他に近年、燃料電池スターリングエンジンなど、通常動力潜水艦の水中行動力向上を狙った非大気依存推進(AIP)が登場している。

原子力原子炉、および 原子力潜水艦も参照

[編集] 乗組員

第二次大戦時の潜水艦は、居住性が劣悪であった。元々軍艦の居住性は良いとは言えないが、潜水艦は特に酷かった。船内は湿気だらけで洗濯物が乾かせず、艦内は燃料と排気とカビの臭気が充満して嗅覚がおかしくなり、就寝用のスペースが限られたため、寝台は数人で共有、弾薬庫の中で魚雷と一緒に寝ていた乗組員もいた程であった。このような環境で毎日単調な任務が延々と続くため、ブリキ病に掛かる者もいた。

そのためか、他の軍艦と比べて食事だけは恵まれており、食料不足に悩んでいた大戦末期の日本やドイツでも、潜水艦には優先的に食料が配給された。ただし、狭く環境の悪い潜水艦では新鮮な食べ物は出航後数週間で消費され、その後は似たような保存食がずっと出される事になる。

原子力機関の登場後は、居住環境は以前よりも改善された。前述のように大出力の原子力機関は電力に余裕があり、電気分解海水蒸留を行えるので酸素真水の確保には困らない。タイフーン級SSBNでは、プールサウナまである。

しかし、一度出航したら数ヶ月間帰還出来ない原潜クルーは、家族との関係を保つのが困難である。米海軍では、原潜は一回の航海に付き一組は離婚するクルーが出ると言う。パートナーと関係を保つのに最も効果的な方法は性行為だとして、米海軍では妻の下着を持たせて夜のおかずにさせていると言う。

[編集] 水中音響戦

初期の聴音機

初期の聴音機

通常の艦艇と異なり、潜水艦は海中で行動する。このため、他の艦艇と戦闘システムは大きく異なっている。空気中と違って、水中では電磁波の減衰が著しいため、電波を用いるレーダーや可視光域・不可視光域での光学的捜索といった手段は使えない。その代わり、主となるのが、海洋中における音波の性質を利用した捜索・攻撃である。その主たる手段がソナーであり、ソナーによる探知と回避をめぐる技術的な蓄積と、それらを用いた対峙を総称して水中音響戦hydroacoustic battle)と称する。この点について前提となる音波の性質や海中における音波伝播について説明する。

[編集] 音波の性質

ソナーで使われる音波(超音波)は、低周波のものと高周波のものとに大分される。

  • 低周波の音波は、水中で減衰しにくいので遠くまで伝わるが、波長が長いために分解能が低く、指向性も広いので探知精度が低い。
  • 高周波の音波は、水中で減衰しやすいために近距離の目標しか探知できない。しかし、波長が短いため分解能に優れ、直進性が高く指向性が狭い、そのため高い精度での測定が可能になる。

以上の理由により、両者の長短をそれぞれ補うように、高周波ソナー低周波ソナーを両方装備するのが一般的である。

音波の伝播は、海域の地形・海水の成分・温度・海流などによって複雑に変化する。そのため、日頃から海洋観測によってその海域についてのデータを集めて置くことが、水中音響戦に於ける勝利の鍵を握る事となる。

参照:

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